2020.10.22
公差の基礎知識~公差等級や寸法公差と幾何公差の違い~
機械設計において図面は設計者と生産担当者との大切なコミュニケーションツールです。
機械部品を製造する場合、部品ごとの誤差の範囲を明示することが必要です。
寸法公差や幾何公差を使い分けながら設計意図を表現します。
当たり前のことですが、図面上に部品の形状や寸法などを正確に記載しなければなりません。
その際、単に穴さえ開いていれば大丈夫という場合と、
穴自体が機能上の重要な役割を持っていて穴の位置や寸法が重要になる場合とでは、全く指示が変わります。
今回は、公差の基礎知識として公差等級や寸法公差と幾何公差の違いなどについて解説します。
「公差」は、英語では tolerance と記載します。
簡単に言うと、工学において「許容される差」のことを言います。
つまり、できあがった製品・部品についての「許容される、誤差を含んだ寸法幅」を意味します。
公差のなかで、特にJIS(日本工業規格)で規定されている公差は普通公差と呼ばれます。
普通公差は、図面の寸法ごとに都度記載されるものではなく、JIS規格に記載されている表をもとに適用します。
また公差は大きく3つに分けることができます。
【寸法公差】
寸法とはJISによると、
「寸法とは決められた方向での対象部分の長さ、距離、位置、角度、大きさを表す量」
と定義されています。
また、「寸法公差」とは寸法と組み合わせて使う部品や製品について許容されるばらつきの範囲です。
【はめあい公差】
穴と軸が互いにはまりあう関係をはめあいという。はめあいには次の種類がある。
・すきまばめ
穴の最小許容寸法より軸の最大許容寸法が小さい場合のはめあい。
・しまりばめ
穴の最大許容寸法より軸の最小許容寸法が大きい場合のはめあい。
・中間ばめ
穴の最小許容寸法より軸の最大許容寸法が大きく、かつ穴の最大許容寸法より軸の最小許容寸法が小さい場合のはめあい。
はめあい公差には、JIS規格で決められている寸法公差がある。
穴の公差はH7、F6など大文字のアルファベットと数字の組み合わせで表記され、
軸の公差はh7、g6など小文字のアルファベットと数字の組み合わせで表記される。
これらの組み合わせで、はめあいの種類や精度を決める。
【幾何公差】
幾何公差は部品や製品を製造した場合に、
「実際の形状が幾何特性についてどのくらい許容できるのか」
というばらつきの範囲を示したものです。
図面では、寸法や寸法公差と併記して、形状や姿勢、位置などの設計意図を伝える役割があります。
例えば、棒に通して一緒に回転させる部品があった場合、
それぞれの中心軸がずれていては部品がぶつかってしまい必要な機能が果たせません。
幾何公差では、部品自体が厳密に測定した場合でも確かに軸が基準方向に対して「平行」「平面」「円」など形状自体の定義を行います。
また、ある部品を基準にしてどの位置に配置すべきかなども定義できます。
分類 | 記号 | 名称 | 意味 | |
形状 |
|
真直度 |
直線の形状(軸)に対し、どのくらいまっすぐなのかを示すもの。幾何学的に正しい直線からどのくらい開きが許容できるかをしめす許容値。 |
|
平面度 | 同一平面上で、幾何学的に正しい平面からの開きの許容値。最も低い位置と最も高い位置の誤差範囲内で示すもの。 | |||
真円度 | 幾何学的に正しい円からの開きの許容値。円サイズの誤差範囲を示すもの。( データム:不要) | |||
円筒度 | 幾何学的に正しい円筒からの開きの許容値。円筒両端の円サイズの誤差範囲内で示すもの | |||
輪郭 | 線の輪郭度 | 理論的に正確な寸法で定められた幾何学的に正しい輪郭からの線の許容値。指定形状を誤差範囲内で示すもの。 | ||
面の輪郭度 | 理論的に正確な寸法で定められた幾何学的に正しい輪郭からの面の許容値。指定面全体を誤差範囲内で示すもの。 | |||
姿勢 | 平行度 | 2つの直線または平面を指定範囲内で示すもの。 | ||
直角度 | 基準に対して指定範囲内で直角であるか示すもの。 | |||
傾斜度 | 基準に対して指定範囲内の角度であることを示すもの。 |
位置 |
|
位置度 | 基準に対して指定範囲内の位置であることを示すもの。 | |
同軸度/同芯度 | 2つの円筒軸が指定範囲内で同軸であることを示すもの。 | |||
対称度 | 基準に対して指定範囲内で対称であることを示すもの。 | |||
振れ | 円周振れ | 回転させたときに指定範囲内での一部の振れをもの。 | ||
全振れ | 回転させたときに指定範囲内での円筒面全体の振れをもの。 |